2025年度から新築住宅に「省エネ義務化」へ。住宅を購入する人に影響は? | 注文住宅展示場.com

2025年度から新築住宅に「省エネ義務化」へ。住宅を購入する人に影響は?

アルヒマガジンメインイメージ(住宅と家族の切り絵)

掲載日:2021/08/04

国土交通省の有識者会議が2021年5月19日、新築住宅に対し、断熱性を高めるなどして省エネルギー基準に適合させるよう義務付けることで合意しました。

2025年度から義務化される「新築住宅の省エネ」について有識者に聞きました。

これまで何度か検討されてきた「新築住宅の省エネ義務化」

政府は脱炭素社会に向け、住宅・建築物の省エネ対策について検討を進めています。論点は「省エネ対策の強化」と「再生可能エネルギー導入の拡大」の2つに大きく分かれます。新築住宅の省エネ基準適合義務化は前者で、後者には太陽光パネル設置や蓄電池の利用拡大が含まれます。

新築住宅の省エネ義務化という政策テーマは、最近急に出てきたものではありません。これまでの経緯について、不動産コンサルティング会社・さくら事務所の長嶋修会長は次のように説明します。

「もともと、2015年から義務化する話でした。2013年くらいから検討していましたが、工務店などの業界団体が『まだ早い』とか『景気を冷やす』などの理由で義務化に反対して見送られました。そこで、5年後の2020年からやろうということになりましたが、それも見送られました。省エネ性能の計算では、パソコンで専用ソフトを使いますが、多くの中小工務店が対応できないからです。つまり、過去2回見送られ、今回が3度目です」(長嶋さん)

今年4月には省エネ基準に適合している説明義務化がスタート

2018年末、300平方メートル未満の小規模建築物について、2020年度からの義務化が見送られた主な理由として、国土省の審議会議事録では次の2つを挙げています。

  • 小規模建築は適合率が低く、義務化により市場が混乱する恐れがあると懸念
  • 基準を満たすために必要な追加投資を光熱費の削減によって回収できる期間が14〜35年と長期にわたる点を問題視

このとき、2020年以降の適合義務化になったのは、オフィスビルやホテル、商業施設など住宅を除く新築の中規模建物(延べ床面積300平方メートル以上2,000平方メートル未満)だけでした。

住宅や小規模建物への義務化が見送られた代わりにメーカーや工務店に対して、建物が省エネ基準に適合しているかどうかの説明を義務付けました。これは、2019年5月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律」(改正建築物省エネ法)として公布され、説明義務制度は今年4月から施行されています。

住宅購入に省エネ義務化の影響は?

将来的に戸建ての取得を考えている人にとって、最も心配なことはコストアップでしょう。しかし、長嶋さんはそれほど心配する必要はないと言います。

「こういう制度がスタートするときは、ほとんどの場合、同時に緩和措置として減税や補助金みたいな政策が並行します。仮にある程度のコストアップがあったとしても、それを吸収できるような形でスタートするはずです」(長嶋さん)

また、木造の戸建てよりもむしろ、鉄筋のマンションのほうがコストアップになる可能性があると言います。

「省エネ基準をどの程度のレベルにするかによりますが、仮に、基準が厳しいのでコンクリートの外側に断熱材を貼ることになったとします。ドイツではそれが当たり前なのですが、そうなると相当なコストアップになるでしょう。今のマンションは外側にタイルなどを貼って、内側に断熱材を入れています。しかし、断熱性能をしっかり上げようとすれば、コンクリートの外側に断熱材を貼ろうという話になります。そうすると、これまでのように建物を敷地内に目いっぱい建てることはできず、外側の断熱材の分だけ建物が大きくなってしまい、売れる面積が減ってしまう。そこまでしないで内断熱だけでサッシの性能を上げる程度で済むのであれば、鉄筋マンションも戸建ても、どちらもたいしたコストアップにはならないでしょう」(長嶋さん)

住宅の省エネ性能が上がれば、住んでからの光熱費をかなり抑えることができます。仮に建築費が多少割高になったとしても、省エネ性能の高い家のほうが、長い目で見て得する可能性が高いといえます。

「ドイツでは住宅を売ったり貸したりするときに、年間の電力消費量を表示することが義務付けられています。日本のマンションでは管理費や積立金をコストの一つとして表示していますが、ドイツではエネルギー消費をコストと見なしているわけです。そうすると、住む人はエネルギーを使わない家のほうが得という判断ができます。政策誘導の方向性として、将来的には日本でもそういう制度を導入するのではないでしょうか」(長嶋さん)

このほか、省エネ性能の高い住宅、すなわち断熱性の高い住宅は不動産の担保評価でも有利になるかもしれません。結露しにくく、建物の長寿命化が期待できるからです。金融機関が高い評価を付ければ、省エネ性能向上の気運を前に進めることになるでしょう。

2050年「カーボンニュートラル」という目標

これまで2回見送られた新築住宅への省エネ義務化ですが、今回はさすがに実行されそうです。

「今はSDGsの大きな流れもありますし、住宅への太陽光パネル設置義務化は小泉進次郎環境大臣の肝いり施策です。太陽光発電は建物本体の省エネ性能を高めるということとは別の話で、政府の会議でも、太陽光をやるのは結構だが、まずは建物本体の省エネ性・断熱性をしっかり高めましょうという議論をちょうどやっているところです」(長嶋さん)

菅義偉首相は2020年10月の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。これは2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするということで、脱炭素社会を目指すということです。「排出を全体としてゼロ」とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いてゼロを達成することを意味しています。

また、6月18日に決定した「骨太の方針」でも、成長の原動力4つに「グリーン社会の実現(=脱炭素化)」が入っています。

次世代の省エネ住宅・建築物産業の構築は、カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の一環でもあるわけです。ゼネコンやハウスメーカー、工務店は競って技術開発に注力することが期待されています。

【取材協力】さくら事務所

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。

執筆者:横山 渉

提供元: アルヒマガジンロゴ

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