ニュースが分かる! Q&A 一条工務店・防災科研の耐水害住宅実験 水害時に浮上する家

記者A 一条工務店と防災科学技術研究所(以下、防災科研)が行った「耐水害住宅」公開実験に行ってきたよ。
記者B テレビのニュースでもやってたわね。現場はどうだった。
A 茨城県つくば市の防災科研の大型降雨実験施設で水位3メートルの状態を再現し、一般住宅と耐水害仕様の木造2階建て住宅を比較したんだよ。
B 同じ洪水時の実験は、昨年も行ってたわよ。今年はどう違うの。
A 昨年の実験で、床下・床上の浸水、逆流、外部設備機器の水没の各対策は実証されたけど、1.2階が共に水没するような水害の場合には、中に空気があるから建物に浮力がかかって、浮上してしまう可能性があると分かったんだ。
B 浮力で流される可能性が出てきたのね。
A それで、販売を1年延期して浮力対策の研究をしたのが、今回実験した浮上する家なんだよ。
B 資料だと、家のベタ基礎と地面のスラブ基礎の二重基礎構造の間に水が入ってきて建物が浮くけど、敷地内の四隅に設置した係留装置で流されないように引き留めるって書いてあるけど。
A 四隅の係留装置の伸縮する復元装置付きのワイヤーで一定の距離でつなぎ止めて船と同じ状態になる。水が引くとワイヤーの張力でほぼ元の位置に戻り、二重基礎構造で水平に着地できるようになっている。係留装置のポールは、地中に2メートル埋設して根元をスラブ基礎と連結してあるから、表層地盤がえぐられても大丈夫な強度にしてあるそうだよ。
B なるほど、それなら安心か。浮上時には、電気の引き込み線なども断線防止の対策がしてあるのね。
A 水道の給排水管も浮上時には損傷せずに外れる仕組みになっていて、水が引くと住民が自分でつなげられるように仕組みにしてある。
B で、実際どのくらいの水位で浮上したわけ。
A 水位約1.45メートルで、ベタ基礎ごと耐水害住宅が浮上し始め、水位約1.6メートルで完全に浮いた。水位約3メートルだと、地面から約1.5メートルほど浮上したよ。浮いた状態だと約2度と傾いている。
B 確かに写真でも右に傾いてるわね。中は大丈夫なの。
A 2度ぐらいは中の家具も倒れないし、人も問題ないとの説明だったよ。傾くのは浮いているときだけだから。
B でも、水害は、川の氾濫とかだから、濁流で木とか漂流物が二重基礎の間に挟まることがあるんじゃないの。
A その点は、ベタ基礎にジャッキを入れて建物を上げて、挟まったものを取り除けるそうだよ。
B その辺も考慮済みね。
A あと、浮上しないタイプもある。一定の水位に達すると床下注水ダクトから外部の水を床下基礎の中に取り込み、重りとして建物の重量を増やす方法で浮力対策をしている。
B なぜ、2タイプ用意したわけ。
A 河川から遠く、水位がそれほど上がらない場合は、床上浸水の対策で十分だからね。もちろん、そのほうが安くあがる。浮上タイプは、延べ床面積35坪の新築住宅で建築費に100万円程度上乗せで、浮上しないタイプは同40万円程度の上乗せだから。
B そこは、ハザードマップを参照にケースごとに考えればいいってことね。実験でのトラブルはなかったの。
A あ、一つあった。一般仕様住宅の建物内の防水(水中)カメラが一カ所水没して作動しなかったなあ。
B それは、カメラメーカーの問題ね。