知って得する建物の豆知識 人気の椅子三脚 実際に座って判断を | 注文住宅展示場.com

知って得する建物の豆知識 人気の椅子三脚 実際に座って判断を

名作椅子

掲載日:2020/12/18

 住宅購入者に人気の高い椅子を三脚選んでみました。

 まずはThonet(トーネット社)のS64です。トーネットはブナ材を使った曲木の椅子で世界を席巻したメーカーです。1930年から生産されたこのシリーズはアームレストのないS32とアームレストを備えたS64に分かれます。ラタン(藤)編みの面をステイン塗装が施された木のフレームが補強しています。オリジナルはマルセル・ブロイヤーが1928年にデザインし、「チェスカチェア」の愛称を持ちます。ちなみに「チェスカ」はブロイヤーの愛娘の名前です。

 当時、バウハウスを離れ、ベルリンに住んでいたブロイヤーはルト・スタム、ミース・ファン・デル・ローエなどと共にパイプ構造の椅子開発を行っていました。自動車産業や機械産業が一気に拡大していく時代で、パイプを曲げる技術も進化し、曲げても直径が変化することなく、曲部にシワの発生もないパイプが量産できるようになり、これが椅子に応用されました。

 しかも、パイプの持つ可撓性(元に戻る性質)を応用して、スプリングのような効果を利用している点も革新的でした。金属パイプを曲げる技術と木を曲げる技術にそれほどの共通性はないと思いますが、S64の開発にはトーネット社が深く関わったようです。

 LC2はフランスの建築家ル・コルビジェの家具デザインとして名高い椅子です。この椅子は10まであるLCシリーズの一つで、シャルロット・ペリアンとの協働のもと、1928年に発表されました。協働ということになってはいますが、実態はペリアンのデザインをそのままコルビジェがパクったという研究家もいます。というのも有名な海辺の家や、キッチン収納のアイデアなど、コルビジェがパクった形跡がペリアンとの協働には多く見られるからです。

 実際に座ってみると、座り心地はすべてクッションの性能に依存しており、クッションのアンコや表面素材で大きく異なります。ニューヨークのセレブの住まいには定番として鎮座していますが、見た目ほど座り心地は良くありません。現在は意匠権が消滅しているので、多くのリプロダクト品がネットなどにはあふれていますが、購入の際には必ず座って判断することをお勧めします。

 チャールズ&レイ・イームズ夫妻がデザインした、プラスチックを使って身体の曲線にフィットするラインを持つ世界初の椅子がシェルチェアです。この椅子はニューヨーク近代美術館が開催したローコスト家具デザイン国際コンペ(1948年)のためにデザインされ、1950年にハーマンミラー社によって製品化されました。第二次世界大戦中に開発された戦闘機の風防などをプラスチックで造る「ブローアップ成型技術」により、大量生産が可能となったプラスチック製椅子です。

 意外に重い イームズ夫妻は北欧の建築家サーリネンやアールトとも親交があり、工業製品としての椅子に関心持ち、その成果がシェルチェアです。当初使用されていたプラスチックは再生できないものでしたが、最近はポリプロピレンに置き換えられ、100%リサイクル可能になっています。

 この適度なサイズの小椅子は家庭、オフィス、図書館、美術館などあらゆる場所で使われましたが、脚がスチールであったため見た目と裏腹に重量があり、移動させるときには常に違和感のある椅子でした。(建築家・中村義平二)