環境への負荷を抑えた「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」とは?

掲載日:2015/12/22

更新日:2020/07/03

地球温暖化を始めとした異常気象は、近年さらなる広がりを見せつつあります。環境の変化は人々の意識をも変えつつあり、家づくりにおいてもそれは例外ではありません。

こうした流れの中で、環境への負担を抑える「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」は今や家づくりの主流となっています。「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」とは、建物の性能を向上させ、高効率な設備や再生可能エネルギーを導入することで、一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した家のこと。環境にやさしいエコライフを実現するとともに、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる住まいが手に入ります。

今回は、

  • 「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」とはどんなものなのか気になる
  • 環境に配慮した家づくりがしたい

という方のために、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」について詳しく解説していきたいと思います。

一次エネルギー消費量の収支がゼロになる家とは?

「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」とは、上記でご説明したように「年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した家」です。

まず、「一次エネルギー消費量」とはなにかご説明しましょう。現代の生活では、快適に過ごすための冷房、暖房が欠かせません。また照明や給湯、換気システムといった設備機器を使うことでも、石油を中心とするエネルギー(一次エネルギー)を常に消費しています。

「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」では、エネルギーの消費を抑えつつ(省エネ)、エネルギーを創出し(創エネ)、家庭内で「消費したエネルギー」と「創出したエネルギー」の収支がゼロになることを目指しています。

「創エネ」は、太陽光パネルで発電を行ない、電気エネルギーをつくりだす太陽光発電がわかりやすいでしょう。「消エネ」はそのままの意味で、家電製品などを使って電気エネルギーを消費すれば、それがイコール「消費したエネルギー」になります。

この「消エネ」より「創エネ」が多ければマイナス、「創エネ」の方が「消エネ」より多ければプラスと考えます。これを「ゼロ」にするということは、「創エネ」と「消エネ」を同じにすることが目標だといえ るでしょう。

エネルギーを生産し、消費を抑える工夫を取り入れよう

「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」を実現するためには、「家庭内でエネルギーを創出すること」、そして「家庭内の消費エネルギーを抑えること」が不可欠です。具体的にはどうすればいいのでしょうか?

まず、エネルギーを創出するには、そのための設備が必要です。代表的な設備には先ほどご紹介した太陽光発電、そして、ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応させることで発電する家庭用燃料電池(エネファーム)などがあります。

消費エネルギーを減らす工夫はさらに多種多様です。たとえば、家庭内で使っている家電を消費電力の少ないタイプと交換したり、照明をLEDにして消費電力を抑えるのも効果的。住まいの断熱性を向上させることで、冷暖房効果を上げるのも省エネになります。また、新築住宅に設置を義務づけられている24時間換気システムを熱交換型換気システムにすれば、換気による冷暖房エネルギーロスを抑えることができます。

ネット・ゼロ・エネルギーハウスが家づくりのスタンダードに

「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」は、地球温暖化対策や電力のピークカットに貢献することから、建設にあたって行政から補助を受けることができます。補助金額は住まいの性能や地域、施工業者、年度によって異なります。詳細は環境省のウェブサイトをご覧ください。(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/zeh.html)

また、「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」の補助金を受けるためには、決められた募集期間内に申請する必要があります。この申請をした後は、間取りの変更ができなくなるため注意が必要です。

さまざまな制約や注意点を抱える「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」ですが、これからの家づくりで確実に主流となってくるプランです。「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」の基準がスタンダードになると共に、再生エネルギーの自家消費拡大をさらに目指した「ZEH+(ゼッチ・プラス)」、築電システムや太陽熱利用、温水システムにより停電時のエネルギーを確保する「ZEH+R(ゼッチ・プラス・アール)」、寒冷、低日射、多雪地域を対象とする「Nearly ZEH(ニアリー・ゼッチ)」など、新しい基準が制定され、これらを対象とする補助事業も充実しています。 家庭内の消費エネルギーを抑えることは、環境への負荷を抑え、地球温暖化などの大規模な環境変化を和らげることにつながるからです。異常気象が収まれば、それは人間にとっても自然が「やさしい環境」になるということ。環境にやさしい家は、人間にとってもやさしい暮らしを実現することにつながるのです。