地熱利用で、室内の温度を適切に保つ仕組みとは?

掲載日:2016/01/28

更新日:2020/07/03

住環境の中で、「温度管理」は極めて重要な意味を持っています。夏は涼しく、冬は温かい家でなければ、1年を通して快適に暮らすことはできません。室内の温度を一定に保つ方法としては、冷暖房が真っ先に頭に浮かぶと思います。しかし、すべてを冷暖房器具に頼りきっていたのでは光熱費がかかりますし、地球環境への負荷も大きくなってしまいます。

そんなときに注目したいのが、自然エネルギーを利用することです。自然エネルギーというと、太陽光や風力などを思い浮かべる方が多いと思いますが、今回取り上げるのは「地熱利用」です。

  • 室内温度差の少ない家で暮らしたい
  • できるだけ冷暖房費にお金をかけたくない

という方のために、地熱利用によって室内の温度環境を維持する方法について考えてみましょう。

太陽光のエネルギーは、地面の奥に蓄えられている

地熱というと、火山から噴出するマグマや温泉をはじめとした「地球内部のエネルギー」をイメージしてしまうかもしれません。確かにこれらのエネルギーも地熱ですが、今回とりあげるものとはまた別のものです。

地球の表面には、毎日太陽光が降り注いでいます。実はこの太陽光によるエネルギー、直接光が当たる地表を温めているだけでなく、地面の深いところまで少しずつ時間をかけて伝わっているのです。そのスピードは非常にゆっくりで、なんと地下5mの深さに到達するまでにおよそ半年もの時間を要します。しかし、逆にいうと、夏の暑い時期から半年たったあとも、地下の深い部分には夏の暑い時期に蓄えられた太陽光の熱エネルギーがたくさん蓄えられているのです。そのため、地面の温度は1年を通して25〜15℃の間という、人間にとって快適な温度帯で維持されています。

地熱利用で建物や吸気を適切な温度に保つ

家づくりにおける地熱利用とは、地面に蓄えられている太陽光のエネルギーを利用することです。

通常の住宅では、床下部分は地面から離れた空洞の構造になっています。ひとつの方法は、この床下空間を砂利で埋めてしまうことです。そうすることで、地面の熱が直接建物に伝わるようになります。夏は室内の暑い熱を砂利から地面に逃し、冬は地熱によって建物をじんわり暖めることができるのです。

また、床下に砂利を敷き詰めずに、そのまま地熱を利用する方法もあります。床下空間に、室内につながる吸気口を設け、地熱によって適切な温度に保たれている空気をそのまま室内の取り込むのです。外気を直接取り入れるよりも、夏は涼しく、冬は温かい空気を取り入れることができます。床下は静かで外界から半隔離された空間なので、チリやホコリも時間とともに沈み、綺麗な空気だけを取り入れることができるでしょう。また、床下にパイプを敷設し、一旦空気を地中深く送り込んでから吸気する方法もあります。この方法なら、コストはかかるもののより効率的に地熱を利用することができるでしょう。

地熱利用はそれだけで「冷暖房の代わりにはならない」

住まいに地熱利用の仕組みを取り入れる際、ひとつ忘れてはいけないことがあります。それは、地熱利用は「冷暖房の代わりになるものではない」ということです。先ほど、「地中の温度は1年を通して25〜15℃と一定」と説明してきました。確かに「一定」ではありますが、温度にはだいぶ幅があるという点が気になった方もいるのではないでしょうか?夏に25℃、冬に15℃程度にしかならないのであれば、それだけで冷暖房の代わりにならないことは納得できるかと思います。

地熱利用の目的は「冷暖房をサポートして光熱費を削減し、室内温度環境を一定に保つこと」です。あくまでもサポートとしての位置づけであり、効率化を目的としたものなので、最初から冷暖房の代わりとして使うことを目的としたものではありません。この点を理解していないと、家が完成したあとで「結局エアコンが必要じゃないか!」とがっかりしてしまうことになります。

最初から地熱利用がどのようなものか知っておけば、後で後悔することもありません。室内の温度を適切に保つためには役立つものなので、ぜひ覚えておいてください。