「賃貸と持ち家はどっちがお得?」は総支払額と価値観で考える

掲載日:2020/10/02

更新日:2020/10/26

「賃貸と持ち家はどっちがお得?」は、様々なメディアで取り上げられてきたテーマ。しかしながら専門家でも「こちらがいい」と言い切れない難しいテーマでもあります。とはいえ、家は一生でもっとも高額な買い物といわれています。誰しも納得して購入を決断したいところでしょう。そこで「賃貸にするべきか、持ち家にするべきか」の判断材料を考えてみたいと思います。

持ち家を買った場合の総支払額

「賃貸にするべきか、持ち家にするべきか」の大きな判断材料の一つに「総支払額」があります。今回は35歳の人が75歳までの40年間住んだとして、それぞれの総支払額を比較してみましょう。

まずは持ち家を買った場合の総支払額をシミュレーションしてみます。国土交通省の『令和元年度住宅市場動向調査』によると、土地から購入して持ち家を建てた世帯の平均資金は約4,615万円です。この価格をベースに、頭金を1,115万円用意して3,500万円のローンを組んだとします。その場合の月々の返済額は約10万7,000円。35年の総返済額は約4,500万円になります(ボーナス返済額なし、金利1.5%、返済期間35年で計算)。

これに頭金の1,115万円を足すと約5,615万円。さらに一戸建ての場合は、外壁の塗り直しなどのメンテナンス費用や生活スタイルの変化などによるリフォームを行うことも考えなければなりません。メンテナンスは10年に一度100万円かかるとして4回分で400万円、リフォームは20年後に一度行うとして200万円かかったとすると合計で600万円。つまり、持ち家の場合は、40年間で約6,215万円かかることになります。

賃貸に住み続けた場合の総支払額

次に賃貸も計算してみましょう。仮に土地代込み4,615万円の持ち家を建てられるエリアを前提として、3LDK前後の賃貸マンションの家賃を13万円とします。これにより40年間の家賃の総支払額は次のようになります。

12カ月×40年=480ヶ月×13万円=6,240万円

さらに賃貸に関しては更新料が2年に一度かかります。更新料が家賃1カ月分だとすると40年分の総額は下記になります。

13万円×19回=247万円

6,240万円にプラスしたら6,487万円。この金額から持ち家の総額6,215万円を引くと272万円。つまり持ち家の方が約270万円お得ということになります。

ただし、この差額はケースバイケースです。家賃相場はエリアによって異なりますし、持ち家の場合は固定資産税などもかかるので絶対にこちらの方がお得、とは言い切れません。

ここで間違いなくいえるのは、持ち家はローンの返済期間に期限がありますが、家賃は住んでいる限り支払い続けなければならない、ということです。持ち家があっても高齢になった時点で売却し、施設に入る人もいるでしょう。また、最近は在宅医療が発達していることなどから自宅で最期を迎えようとするケースも増えています。いずれにしても長く住めば住むほど持ち家の方の経済的メリットが大きくなるのは間違いないはずです。

賃貸に住み続けた場合の総支払額イメージ

「価値観」からどちらにするべきかを考える

ここまでは経済的な面から賃貸物件と持ち家を比較してきました。しかし、人は経済的負担が低ければ、それだけで快適に暮らせるというわけではありません。たとえば、「どうしても大きな犬を飼いたい」ということであれば、賃貸住宅は選択肢から外れてしまいます。このようなことから価値観も賃貸にするか、持ち家にするかの大きな判断材料といえます。

どちらが自分や家族の価値観に合っているのか判断するには、それぞれのメリット・デメリットを知る必要があるでしょう。そのおもなものには次のようなものがあります。

持ち家のメリット
  • キズや汚れなどを気にしなくていい
  • 自由にリフォームや設備交換ができる
  • ペットの選択肢が広い
  • 自分のものという満足感
  • 社会的信用度アップ
  • 子どもなどに資産として残せる
  • 老後も大家や周辺住民に気兼ねなく住み続けられる
持ち家のデメリット
  • ローンを払い続けなければならないプレッシャーがある
  • 気軽に引っ越せない
  • メンテナンスを自分でしなければならない
  • 近所づきあいが面倒な場合もある
  • 土壌汚染・軟弱地盤など購入後に欠陥がわかることもある
賃貸のメリット
  • 転勤・転職時にすぐに引っ越せる
  • 出産など家族の増減に柔軟に対応できる
  • 入居するのに持ち家ほど初期費用がかからない
  • 維持管理を管理会社や大家に任せられる
  • 手軽に流行の最先端の物件に住み替えられる
  • 比較的駅に近い物件が多い
賃貸のデメリット
  • キズや汚れなどに気をつかう
  • いくら家賃を払っても自分の資産にならない
  • 自由にリフォームや設備交換ができない
  • 好きなペットが飼えない
  • バリアフリーなど高齢者に配慮した物件が少ない

このほかの持ち家のメリットには、ローンの返済中は団体信用生命保険が付いている、ということがあります。これはローンの返済中に契約者が死亡した場合などにローンが完済されるというものです。したがって、残された家族が返済を続ける必要はありません。賃貸の場合は、契約者が亡くなっても家賃は払い続けなければならないので、大きな安心材料になるはずです。

「賃貸にするか、持ち家にするか」は、経済的な面と同時にどちらが自分や家族の価値観に合っているのかも非常に重要です。また、もし持ち家にするのなら、できれば年金生活に入る前にローンは完済したいものです。このように自分や配偶者の老後まで考慮して、どちらを選ぶか検討してみましょう。