失敗しない間取りづくりのための基礎知識

掲載日:2020/10/02

更新日:2020/10/26

注文住宅の大きな魅力の一つに、間取りを自由に決められることがあります。

「リビングはこうしたい」「収納はこれくらいほしい」と決めていく過程はワクワクするものです。一方で間取りづくりは、その後のライフスタイルを大きく左右するので絶対に失敗したくないところでしょう。 生活のしやすい間取りは十人十色です。こうしなければならない、というルールはありません。ですが、いざとなると、どう考えればいいのか分からない、という人が多いのではないでしょうか。そこで間取りづくりの基礎知識をご紹介します。

3つのゾーニングを基準にスタートする

住宅の間取りづくりは、玄関、リビング、ダイニングなど家族全員が利用するパブリックスペース、寝室や子ども部屋など個別に使用するプライベートスペース、水まわりや収納などのその他のスペースの3つに分けて検討すると考えがまとまりやすいでしょう。

ただし、この3つに共通して考慮しなければならないことがあります。それは次の3つです。

①生活・家事動線

生活動線とは朝起きてから寝るまでの動線です。家事動線は料理や洗濯などの家事を行う際の動線です。これらはできる限り短い方が住みやすくなります。たとえば、朝起きてからトイレに行くまでの動線が長ければ面倒に感じますし、洗濯機から干す場所までが遠ければ肉体的負担が大きくなってしまいます。また、動線は家族同士がぶつからないように考慮することも必要です。

②照明スイッチ・コンセントの位置

照明スイッチとコンセントの位置は使いたい場所にあるのが大前提です。夜、暗い廊下からリビングやトイレに入った際に手探りでもすぐに分かる位置に照明スイッチがあれば便利でしょう。また、廊下の途中にコンセントがあれば掃除機の電源コードが届きやすくなります。

③上下階の位置関係

2階のトイレの下に寝室があったり、吹き抜けの脇に受験生の子ども部屋があったりすると音が気になるものです。排水音や人の話し声がする場所の近くは音が気にならないスペースにするようにしましょう。特に上下階の位置関係によって聞こえる音は、平面図を見ただけでは気づかないことが多いので注意が必要です。

以上の3点を考慮した上で次の3つのゾーニングを考えていきます。

パブリックスペースを考える

おもなパブリックスペースには、玄関、リビング、キッチンなどがあります。それぞれの注意点を紹介しましょう。

「玄関」

玄関の失敗例で意外に多いのが「土間が狭すぎた」というものです。玄関土間は靴のほかにも、コート、子どものおもちゃやスポーツ用品、夫婦の趣味のグッズなど、収納できると生活動線が楽になるモノがたくさんあります。これらのことも考えてスペースを確保しましょう。

また朝、気持ちよく出かけるためには、玄関はできるだけ明るい方がいいでしょう。可能ならば窓を設けることをお勧めします。さらに高齢者や障害のある人との同居、またはそのような来客を想定して手すりの設置も忘れてはなりません。

「リビング」

リビングを考える際にありがちなのが、「とにかく12帖」といったように広さを先に決めてしまうことです。しかし、この方法だと「広すぎて殺風景」「意外に狭くて希望のソファが置けない」といった失敗もあり得ます。まずはリビングに置きたいものを書き出して、それにあった間取りを考えましょう。また、リビングに隣接した来客用の和室を設ける場合は、何人ぐらいの来客が泊まるのか想定して広さを確保しましょう。

リビングの多くは、明るくするために大きな窓を設けますが、その位置によってはプライバシーを確保できなくなるので注意が必要です。大きな窓が無理な場合は、天窓を付けるという手もあります。

「キッチン」

キッチンで重要なのは、家事動線です。必要な家電が使いやすい位置にあるのか、夫婦や親子で料理をすることが可能な広さなのか、など実際に使用している様子をイメージしてみましょう。この際にパントリー(食品庫)や調理家電用のコンセントの位置も十分考慮する必要があります。

このほかにもパブリックスペースとしては、吹き抜けや屋上スペースなどがあります。どちらも豊かな生活に貢献するものですが、「住みはじめると意外に必要なかった」という声が多いのも事実です。設けるにはそれなりの費用がかかるので、間取りを検討する際は本当に必要かよく考えましょう。

パブリックスペースを考えるイメージ

プライベートスペースを考える

おもなプライベートスペースといえば、寝室と子ども部屋でしょう。それぞれの注意点を考えてみます。

「寝室」

寝室は広すぎると、落ち着かずに眠りが浅くなりがちです。寝る人数を考慮した適正な広さを考えましょう。たとえば、ダブルベッド、テレビ、ドレッサーを多少の余裕を持って置ける広さは8帖くらいです。

また、寝室は長時間人がいる空間なので、湿気がこもりがちです。そのため、換気が十分できる窓が必要でしょう。この窓は、プライバシーの確保や朝日が目に入らないようにするなど、位置に十分配慮することが重要です。

「子ども部屋」

子どもの居場所は、成長段階によって異なります。たとえば、思春期を迎えるまでは、親と一緒に過ごす時間が多いはずです。そのため、子どもが産まれる予定、または小さい子どもいる世帯は、将来子ども部屋になるスペースを人数分だけ確保しておき、寝室は親と一緒にする。さらに料理中のキッチンから見えるリビングに遊び場とおもちゃの収納を確保します。そして、小学校に通うようになったときのために、廊下やスキップフロアに親と一緒に勉強できるファミリーライブラリーなどを設けるといった方法があります。

 

 

その他のスペースを考える

家には浴室やトイレといった水まわりや十分な収納スペースも必要です。これらの注意点にはどのようなことがあるのでしょうか。

「浴室」

一人で入るのか、子どもと一緒に入るのかで必要な広さが異なります。また、換気のために窓が必須ですが、外からの目に注意しなければなりません。さらに脱衣スペースから物干し場への動線も考慮するべきでしょう。

「トイレ」

寝室からの距離、来客が使用する際の動線、玄関から出入りが見られないか、など位置関係には注意が必要です。また、広すぎると落ち着かなくなりますし、狭すぎると掃除用具などの収納スペースが確保できなくなります。

「収納スペース」

収納の基本は、使いたいモノを使いたい場所にしまうことです。たとえば、テレビのリモコンや調理家電など毎日使うモノは、それらを使う場所に収納スペースを設けます。一方でスーツケースなど年に何回も使わないモノや大きなモノは、納戸やロフトを設けてしまえばいいでしょう。

収納スペースに棚を設ける場合は、奥行きに注意が必要です。小さいモノをしまうのに奥行きがあり過ぎると、取り出しにくいうえに空間の無駄遣いになってしまいます。

失敗しない間取りづくりの秘訣は、家族全員で上記基礎知識を共有しつつ、話し合って決めていくことです。子どもでもある程度大きくなっているならば積極的に希望を聞いてみましょう。また、二世帯住宅ならば親世帯の意見をとことん聞く必要があります。ただし、具体的なプランは、ハウスメーカーの設計士など専門家に作成してもらうのが得策です。専門家ならば様々な事例を知っているはずなので、素人には思いもつかない提案も期待できます。まずは本記事で間取りづくりの基礎知識を理解し、それを基にハウスメーカー相談、そしてメーカーから提案されたプランを確認するのが効率的な方法となるはずです。