地球温暖化を始めとした異常気象は、近年さらなる広がりを見せつつあります。環境の変化は人々の意識をも変えつつあり、家づくりにおいてもそれは例外ではありません。

こうした流れの中で、環境への負担を抑える「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」は今や家づくりの主流となっています。「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」とは、建物の性能を向上させ、高効率な設備や再生可能エネルギーを導入することで、一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した家のこと。環境にやさしいエコライフを実現するとともに、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる住まいが手に入ります。

今回は、

という方のために、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」について詳しく解説していきたいと思います。

一次エネルギー消費量の収支がゼロになる家とは?

「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」とは、上記でご説明したように「年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した家」です。

まず、「一次エネルギー消費量」とはなにかご説明しましょう。現代の生活では、快適に過ごすための冷房、暖房が欠かせません。また照明や給湯、換気システムといった設備機器を使うことでも、石油を中心とするエネルギー(一次エネルギー)を常に消費しています。

「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」では、エネルギーの消費を抑えつつ(省エネ)、エネルギーを創出し(創エネ)、家庭内で「消費したエネルギー」と「創出したエネルギー」の収支がゼロになることを目指しています。

「創エネ」は、太陽光パネルで発電を行ない、電気エネルギーをつくりだす太陽光発電がわかりやすいでしょう。「消エネ」はそのままの意味で、家電製品などを使って電気エネルギーを消費すれば、それがイコール「消費したエネルギー」になります。

この「消エネ」より「創エネ」が多ければマイナス、「創エネ」の方が「消エネ」より多ければプラスと考えます。これを「ゼロ」にするということは、「創エネ」と「消エネ」を同じにすることが目標だといえ るでしょう。

エネルギーを生産し、消費を抑える工夫を取り入れよう

「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」を実現するためには、「家庭内でエネルギーを創出すること」、そして「家庭内の消費エネルギーを抑えること」が不可欠です。具体的にはどうすればいいのでしょうか?

まず、エネルギーを創出するには、そのための設備が必要です。代表的な設備には先ほどご紹介した太陽光発電、そして、ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応させることで発電する家庭用燃料電池(エネファーム)などがあります。

消費エネルギーを減らす工夫はさらに多種多様です。たとえば、家庭内で使っている家電を消費電力の少ないタイプと交換したり、照明をLEDにして消費電力を抑えるのも効果的。住まいの断熱性を向上させることで、冷暖房効果を上げるのも省エネになります。また、新築住宅に設置を義務づけられている24時間換気システムを熱交換型換気システムにすれば、換気による冷暖房エネルギーロスを抑えることができます。

ネット・ゼロ・エネルギーハウスが家づくりのスタンダードに

「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」は、地球温暖化対策や電力のピークカットに貢献することから、建設にあたって行政から補助を受けることができます。補助金額は住まいの性能や地域、施工業者、年度によって異なります。詳細は環境省のウェブサイトをご覧ください。(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/zeh.html)

また、「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」の補助金を受けるためには、決められた募集期間内に申請する必要があります。この申請をした後は、間取りの変更ができなくなるため注意が必要です。

さまざまな制約や注意点を抱える「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」ですが、これからの家づくりで確実に主流となってくるプランです。「ネット・ゼロ・エネルギーハウス」の基準がスタンダードになると共に、再生エネルギーの自家消費拡大をさらに目指した「ZEH+(ゼッチ・プラス)」、築電システムや太陽熱利用、温水システムにより停電時のエネルギーを確保する「ZEH+R(ゼッチ・プラス・アール)」、寒冷、低日射、多雪地域を対象とする「Nearly ZEH(ニアリー・ゼッチ)」など、新しい基準が制定され、これらを対象とする補助事業も充実しています。 家庭内の消費エネルギーを抑えることは、環境への負荷を抑え、地球温暖化などの大規模な環境変化を和らげることにつながるからです。異常気象が収まれば、それは人間にとっても自然が「やさしい環境」になるということ。環境にやさしい家は、人間にとってもやさしい暮らしを実現することにつながるのです。

近年、「家庭用蓄電池」を設置する家庭が増えてきました。しかし、詳しい機能を知らない方も多いのではないでしょうか? なんとなく「エコに役立ちそう」「光熱費が削減できるのでは」といった漠然としたイメージで捉えている方もたくさんいると思います。

そこで今回は、

という方のために、家庭用蓄電池のメリットとデメリットをご紹介しましょう。

経済的なメリットをあらかじめ予想するのは難しい

家庭用蓄電池の基本的な使い方は、「夜間に発電した電気を蓄えておき、昼、電気をたくさん使う時間帯に使用する」というものです。通常、電気料金は消費量が多い昼間は高く、消費量が減る夜間は安く設定されています。そのため、「昼の電気料金−夜の電気料金 の差額分だけ光熱費を削減できる」といわれているのです。

たしかに、家庭用蓄電池で光熱費を削減できることは事実ですが、ひとつ問題があります。それは、毎月の光熱費削減額が決まっているわけではないということです。

たとえば、住んでいる地域や契約内容によって、電気料金はそれぞれ異なります。さらに、毎日どれくらい電気を使うかも家庭によって異なり、一定ではありません。そのため、「月々いくら光熱費が安くなるから設置しよう」というふうに、リターンを見込んで設置するのが難しいのです。

家庭用蓄電池を設置するための初期費用は決して安くはありません。経済的なメリットにばかり注目していると、「大きなお金をかけたのに、思ったほどメリットを実感できない」などという事態に陥ることも十分考えられるのです。

家庭用蓄電池の真のメリットは、「災害への備え」

家庭用蓄電池の「真のメリット」は「災害への備え」です。電力を蓄えておくことができるので、災害などで電線が寸断されてもしばらくの間、電力供給を維持することができます。また、昼間蓄えた電気を使うことで、電力消費のピークカットに貢献することも可能です。直接自分の利益になることではありませんが、社会全体に貢献できるという意義があります。

太陽光発電と併用するべきか否か

家庭用蓄電池と相性のいい設備に、太陽光発電があります。太陽光発電は太陽の光で電気を作り出すことができますが、夜間は発電することができません。一方、家庭用蓄電池は電気を一時的に蓄えておき、「後で使う」ことが可能です。太陽光発電で生み出した電気のうち、使い切れなかった分を家庭用蓄電池に蓄えておけば、光熱費削減の効果はより高まります。発電量が多いときには、売電して利益をあげることもできるでしょう。

しかし、メリットが大きい分、デメリットもあります。家庭用蓄電池に加えて太陽光発電の設置費用が必要になるため、初期費用がかさんでしまいます。

また、太陽光発電と家庭用蓄電池を併用する方法は、「ダブル発電」と呼ばれています。ダブル発電の場合、太陽光発電単体で使用するときよりも売電価格が低く設定されてしまうため、思っていたほど売電利益が得られないということも考えられるでしょう。

「省エネ」という観点から見た場合、家庭用蓄電池と太陽光発電の組み合わせには確かに魅力があります。しかし、併用することで経済的なメリットが必ずしも増加するとは断言できません。家庭用蓄電池の採用を考えるときは、経済的に得するばかりを目的とせず、

この2点をベースに考えをまとめるといいでしょう。

家庭用蓄電池や省エネ設備を新築住宅に導入することで、補助金の対象になった事例もあります。皆様のご自宅でも、上手に取り入れられるといいですね。

家づくりを検討している方なら、「スマートハウス」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。スマートハウスとは、太陽光発電など複数の設備を組み合わせて省エネ化を実現した家のことです。

今回は、

と考えている方のために、スマートハウスの仕組みとその利点をご紹介します。

スマートハウスとは、最新テクノロジーを結集した「省エネの家」

スマートハウスは、「太陽光発電」、「家庭用蓄電池」、「HEMS(電力見える化システム)」という3つのシステムを組み合わせることでつくられています。まずはそれぞれのシステムについてご説明しましょう。

太陽光発電は、建物の屋根や壁面にとりつけたソーラーパネルによって、太陽光から電気をつくりだす設備です。今や住宅についているのが当たり前なほど定着した設備なので、ほとんどの方がスマートハウスとは関係なく知っていると思います。

家庭用蓄電池は、一般的な充電池と同じように電気を一時的に貯めておくことができる設備です。たとえば、「電力料金の安い夜間に電気を貯めておき、昼になったら使う」ということができるので、光熱費の削減が期待できます。また、停電時には非常用電源として役立つ設備です。

HEMS(電力見える化システム)は、最も馴染みの薄いものかもしれません。家の中には、さまざまな家電があり常時電力を使っています。HEMSは、「電力見える化」という言葉の通り、各家電がどれだけ電力を消費しているか管理し、わかりやすく知らせてくれる設備です。家電の消費電力がわかれば、節電意識が高まり、電気の無駄遣いを減らせます。

3つの設備を組み合わせて相乗効果を発揮させる

太陽光発電、家庭用蓄電池、HEMSは、単体でも十分有用な設備です。しかし、それぞれの設備を組み合わせることによって、良い相乗効果を発揮できます。

たとえば、太陽光発電に家庭用蓄電池を組み合わせた場合のことを考えてみましょう。昼間は、電気料金の安い夜間に家庭用蓄電池が蓄えた電気を使うことになります。しかし、同時に太陽光発電は日光の供給を受けるので、発電することが可能です。電気の消費量に対して供給量が多くなるので、余った電気は電力会社に売電して利益を得ることができます。

さらに、ここにHEMSが加わったとしたらどうなるでしょうか? 家電の消費電力を管理し、電気の無駄遣いを減らすことによって、さらに売電できる電気の量が増えるはずです。このように、3つの設備を組み合わせることによって、それぞれの長所を活かせるのがスマートハウスの利点です。

スマートハウスは省エネに役立つだけでなく、暮らしを便利にする。

スマートハウスの利点は、単に省エネに役立つだけではありません。カギを握るのはHEMSが持つもうひとつの機能、家電を遠隔操作する仕組みです。これを利用すれば、

といったことができるようになります。もちろん、HEMS単体で使ったとしても便利な機能ですが、スマートハウスの中で3つの機能を組み合わせるほうがよりメリットが大きくなります。

スマートハウスは省エネのための設備です。しかし、省エネだけでなく生活を便利にしてくれる働きを持っていることも忘れないでください。