危険な薬剤を使わない「住宅の安全な防腐対策」

掲載日:2015/11/02
更新日:2020/07/03
家に住めなくなってしまう原因はいろいろありますが、特に恐ろしいのは「建材の腐食」でしょう。腐食が恐ろしい理由は、住宅が土台からやられてしまうことです。ほかの部分なら補修ができる場合もありますが、構造に関わる部分となると修復はなかなか困難です。
住宅の腐食を防ぎたいのであれば、防腐剤を使用するのが一般的な対策でしょう。しかし、薬剤を使用することから、健康被害を心配する方も少なくありません。
- 今まで住んでいた家の柱が腐ってしまった
- 子どもがいるため、危険な薬剤を使いたくない
こうした悩みを抱える方にとって、新しく建てる家の防腐処理をどうするかは頭がいたいところでしょう。そこで今回は、新築住宅の防腐処理について考えてみたいと思います。
住宅の防腐防蟻処理は、法律による義務
まず、大前提として知っておいてもらいたいのは「住宅に防腐処理を施すことは法律で義務付けられている」ということです。建築基準法には、
「柱、筋かい及び土台のうち、地面から1m以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、シロアリその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。」
と記載されています。簡単に説明すると「地面から1m以内にある建物の構造に関わる部分には、防腐防蟻処理を施さなくてはならない」ということです。「健康被害が心配だから、防腐処理はしなくてもいいや」というわけにはいきません。
安全な「自然素材からできた防腐剤」もある
さて、具体的な防腐防蟻処理の中身についてですが、一般的にはやはり防腐剤を使用するパターンが多いといえるでしょう。しかし、防腐剤といっても人工的に作られた薬剤ばかりではありません。中には炭や柿渋といった自然素材から作られた防腐剤もあります。
防腐剤による健康被害が心配な方は、そうした自然素材で作られた防腐剤を使用しましょう。あらかじめ施工業者に「防腐防蟻処理について希望がある」旨を伝えておくのが賢明です。
防腐防蟻処理の方法は、防腐剤だけではない
防腐防蟻処理の方法は、なにも防腐剤だけではありません。実は、建築基準法で求められる「防腐防蟻処理」について、具体的な方法は関連する仕様や法律で定められているものを用いることになっています。防腐剤はもちろんそれらの1つですが、ほかにもいくつか方法があるのでご紹介しておきましょう。
たとえば、住宅金融公庫が定めている、防腐防蟻処理の耐久性仕様である「等級2」には、以下のような方法が記載されています。
- 耐久性樹種の使用
- 外壁通気工法とする
「耐久性樹種」とは、劣化が少ないと認められた木材のことです。ヒノキやヒバといった樹種が含まれます。これらの樹種を使用すれば、防腐剤を塗布する必要はありません。
続く、「外壁通気工法」とは、外壁内に通気口を設け、透湿防水シートと呼ばれる「水蒸気だけを通す膜」で覆う工法です。外壁内の湿度が自動的に調節されるため、腐食が起こりにくくなり、防腐対策としての効果を発揮します。こちらも耐久性樹種と同様、防腐防蟻処理として認められているのです。
このように、 防腐剤を使う場合は安全な自然素材を使用することもできますし、防腐剤を用いずに防腐対策を施すとも可能です。建物と家族の健康を守るために、色々な方法を模索してみましょう。