注文住宅のおもな工法とその特徴

掲載日:2020/10/02
更新日:2020/10/26
満足できる注文住宅を建てる際にこだわるべき点はいくつもあります。デザイン、耐震性、アフターフォローなど、どれも見落としたくない項目でしょう。そのようななかでも最初に理解しておきたいのが、建物の工法です。工法は建物の特徴を決定づける大きな要素の一つ。それぞれにメリット・デメリットがあり、ハウスメーカーによって採用する工法は異なります。そこでおもな工法とそれを採用するハウスメーカーをご紹介します。
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木造軸組工法の特徴とメリット・デメリット
日本の建物の工法として昔から用いられているのが木造軸組工法です。伝統的な工法なので、在来工法とも呼ばれています。
この工法は、木材の柱とそれをつなぐ梁、柱と柱の間に斜めに取り付ける筋交いなどで構成されるものです。柱や梁といった軸材で組み立てるため「軸組工法」という名称になっています。構造的な制約が少なく、狭小地や変形地にも対応しやすいといった特徴があります。
木造軸組工法は、ハウスメーカーに限らず多くの工務店でも採用され、日本でもっとも普及している工法といえます。以前は職人の技術によって施工品質が左右されるものでした。しかし昨今は、工場で加工された木材や集成材などを採用することで、精度のばらつきがなくなりつつあります。また、耐震性を不安視する声もありますが、強度に優れた設計を行い、補強金具などを使用することで他の工法と同等の性能を持たせることが可能になっています。
メリット
- 施工やメンテナンスに慣れた職人が多い
- 木材という自然素材を使用するので地球環境にやさしい
- 設計上の自由度が高く、狭小地や変形地でも柔軟に対応できる
- 増改築がしやすい
- もっとも普及している工法なので比較的安価
デメリット
- シロアリ被害の可能性がある
- 湿気などによって木材が腐朽することがある
- 大空間や大開口の設計はしにくい
- 耐火構造にするにはコストがかかる
- 高気密、高断熱や防音性の高い建物にするにはコストがかかる
木造軸組工法を採用するハウスメーカー
ツーバイフォー工法(ツーバイシックス工法)の特徴とメリット・デメリット
ツーバイフォー工法は、断面寸法が2インチ×4インチ(約5㎝×10㎝)の木材で枠を組み、合板を取り付けることで壁を形成するものです。日本では枠組壁工法とも呼ばれています。
アメリカ、カナダでは極めて一般的な工法で、現在はヨーロッパ、オセアニア、南米など世界中で採用されるグローバルスタンダードな工法となっています。
軸組工法の場合は建物を柱や梁などの「点と線」で支えますが、ツーバイフォー工法では壁、床、天井の「面」で支えます。そのため強度が高く、断熱性や気密性にも優れた建物となります。また、2インチ×6インチ(約5㎝×約15㎝)」の木材で枠を組むツーバイシックス工法にすれば、より壁が厚くなるので断熱材の量を増やせ、さらに断熱性能を上げることができます。
この工法は、構造材から釘までサイズや施工方法が公的に規定されており、施工品質にばらつきが出にくいようになっています。また構造的に高い強度を持つことから4階建てまでの建築が認められています。
メリット
- 面で支えるので耐震性・気密性・断熱性が高い
- 施工方法が厳密に定められているので施工品質にばらつきが出にくい
- 施工方法が規格化されているので比較的コストダウンしやすい
デメリット
- 壁で構成する工法なので窓の場所や大きさに制約がある
- 壁をつくってから屋根をかけるので施工中の雨対策が必要
- 増改築が難しい
ツーバイフォー工法(ツーバイシックス工法)を採用するハウスメーカー
住友不動産、住友林業、セキスイハイム、富士住建、三井ホーム、一条工務店
木質系プレハブ工法の特徴とメリット・デメリット
プレハブとは、部材をある程度工場で仕上げて現場に運び、組み立てる工法です。木質系プレハブ工法は、ツーバイフォー工法のような木材の壁を工場で生産します。ただし、工場において断熱材から下地材まで装着し、木質パネルとして現場に搬入するところがツーバイフォー工法と大きく異なります。
木質パネル同士を接着剤や釘によって強固に接合し、壁、床、天井の6面体を形成。高い耐震性・気密性・断熱性を実現します。
また、プレハブ工法ゆえに部材の精度も高く、工期も短くて済みます。
メリット
- 工場生産の部材が多いので精度が高い
- 工期が短くて済む
- プレハブゆえに職人の熟練した技術は比較的必要ない
デメリット
- 比較的多くの接着剤を使用するため気にする人もいる
- 規格化されたパネルを使用するため間取りの自由度が低い
- 増改築が難しい
- 壁をつくってから屋根をかけるので施工中の雨対策が必要
木質系プレハブ工法を採用するハウスメーカー
鉄骨系プレハブ工法の特徴とメリット・デメリット
工場生産された鉄骨を使用して建築する工法です。このなかでも柱や梁、ブレース(筋交い)を用いて建てるのが鉄骨軸組工法で、前述の木造軸組工法の鉄骨版といえます。この鉄骨には軽量鉄骨とより太い重量鉄骨があり、後者は3階建て以上などの大規模な建築に採用されます。
そのほかにもラーメン構造といわれる工法もあります。こちらは工場で柱と梁を剛接合してボックス型のユニットを製造し、現場に運んで組み立てます。プレハブのなかでも工場で行う工程が多いので、工期が他の工法よりも短くなります。
メリット
- 工場生産ゆえに部材の精度が高い
- 鉄骨は強度が高いので大空間・大開口がつくりやすい
- 軸組工法の場合は間取りの自由度が高い
- ラーメン構造の場合は、より工期が短くて済む
デメリット
- 鉄は熱伝導が高いので結露が生じやすい
- 鉄は火災時の高温で急激に強度が落ちる
- 木質系に比べて高コストになりがち
鉄骨系プレハブ工法を採用するハウスメーカー
コンクリート系プレハブ工法の特徴とメリット・デメリット
コンクリート系プレハブ工法とは、工場で成形された鉄筋入りのプレキャストコンクリートパネル(PCa板)を現場に搬入し、組み立てるものです。工場生産された壁・床・天井による6面体のPCa板は、現場でコンクリートを流し込む工法に比べ、天候に左右されず、安定した品質を実現します。
また、鉄筋コンクリート造ゆえに耐震性・耐久性・耐火性・遮音性に優れており、防火地域でも建築可能です。
メリット
- 耐震性、耐久性、耐火性が高い
- 防火地域でも建築可能
- 遮音性が高い
デメリット
- 建築コストが高い
- 建物の重量が重いので、しっかりした地盤や地盤改良が必要
- 増改築が難しい
どの工法が特に優れているということはありません。すべての工法に対して建築基準法が適用されるので、工法を問わず一定の耐震性や断熱性などの住宅性能は有しています。さらに上の性能を望むのなら、どの工法でも設計や部材の選択次第でほぼ同じレベルにすることが可能です。
したがって工法を選ぶ際の観点は、デザインやコスト、工期、増改築のしやすさ、環境への配慮といったところになるでしょう。最終的にはハウスメーカーの担当者に何を重視するのかを伝え、その回答によって絞り込むことをお勧めします。