狭小住宅とは? 暮らしやすい間取りと注意点

掲載日:2020/10/02

更新日:2020/10/26

「都心に注文住宅を建てる」。多くの人が憧れることではないでしょうか。ここで最大のネックとなるのが、土地の価格が高すぎるということです。もし、手の届く価格の土地が見つかったとしても、かなり狭いものでしょう。そこでぜひ検討したいのが狭小住宅です。狭小住宅には「狭い=暮らしにくい」という印象があるかもしれませんが、そんなことはけっしてありません。工夫次第で想像よりもずっと快適な住まいが実現できます。

意外に多くある狭小住宅のメリット

そもそも狭小住宅とは、どんな住まいでしょうか。実は狭小住宅に明確な定義はありません。一般的には、15坪(約50㎡)以下の土地に建てられた住宅を指すことが多いようです。

「そんな狭い土地に家が建つはずない!」「建てられたとしても全部4畳半以下の部屋だろう」。そう思う人も多いはずです。しかし、工夫次第では意外に暮らしやすい間取りが可能です。具体的には、3階建てで延べ床面積80㎡(約24坪)前後のプランが十分入ります(地形により無理な場合もあり)。間取りもLDK12帖前後、そのほかの部屋も6帖前後と一般的な家と比べても遜色ありません。

つまり狭小住宅は、けっして無理をして暮らす家ではないのです。そのうえで、次のようなさまざまなメリットもあります。

1.価格が安い

もっとも大きなメリットは土地・建物ともに安くできるということでしょう。土地に関しては、狭いと使い道が限られるため、場合によっては相場よりも2~3割安く購入することが可能です。たとえば、東京23区内でも特に交通の便がいい土地は、坪単価300万円前後します。15坪なら4500万円。これが狭小地という理由で、3150万円になることもあり得るのです。土地代だけで1350万円も安くなります。さらに建物がコンパクトになるので、建築費も安くできます。

2.冷暖房効率がアップする。

建物が小さいと、それだけ冷暖房効率がアップします。もし、全館空調システムを導入すれば、効率よく家の隅々まで夏は涼しく、冬は暖かい家が実現します。

3.冷暖房費が安く済む

冷暖房効率がいいということは、それだけ省エネということです。毎月の冷暖房費が安くなります。

4.家事が楽な家になる

暮らしやすいコンパクトな家は、家事動線が短くなります。また、コンパクトな分だけ掃除をする部分も少なくなる。つまり、家事が楽になるのです。

5.メンテナンスが楽になる

建物がコンパクトということは、それだけ傷む部分も少ないということです。したがって、メンテナンスが楽になります。また、それは修繕費用も少なくて済むということにつながります。

6.固定資産税が安く済む

固定資産税の納税額は、土地と建物の評価額に比例します。したがって、物件価格がリーズナブルな狭小住宅は、固定資産税も安く済むのです。

意外に多くある狭小住宅のメリットイメージ

デメリットも理解して対処方法を考える

以上のようにメリットの多い狭小住宅ですが、次のようなデメリットも存在します。暮らしやすい狭小住宅を建てるには、これらをよく理解したうえで、対処方法を考えることが重要です。

1.間取りに工夫が必要

狭い面積で、暮らしやすい間取りを実現するには、さまざまな工夫の積み重ねが必要です。まず、3階建てが前提でしょう。そのほかにも、たとえば以下のような対処方法が考えられます。

2階LDK(リビング・ダイニング・キッチン)

前面道路や周辺建物からの距離が近い狭小住宅では、プライバシーや日当たりを考慮して2階をLDKにするケースが多々あります。この場合、同じく2階にバスルームや洗面室などの水まわりをもってくると家事の効率がアップします。

スキップフロア

床の高さをずらす仕様をスキップフロアといいます。これには中2階も含まれます。建物内の間仕切壁を極力減らし、スキップフロアを設けることで、空間にリズム感が生まれて実際よりも広く感じる効果があります。また、中二階は+αの部屋として書斎や子どもの遊び場などに活用できます。さらに段差の下は収納スペースとしても利用できます。

リビングの勉強スペース

面積の関係で十分な広さの子ども部屋が確保できない場合は、勉強と寝るスペースを分けてしまうという方法もあります。たとえば、普段目の届くリビングを勉強スペースとし、子ども部屋は3帖程度の寝室専用とします。

屋上

せっかく一戸建てを手に入れても、狭小住宅では庭の確保は困難です。そこで屋上はいかがでしょうか。屋上ならば、プランターなどで家庭菜園ができるほか、周りからの視線や煙の心配が減るのでバーベキューも比較的気軽に楽しめます。

ロフト

ロフトとは部屋の天井を高くし、2層にしたスペースです。天井高1.4m以下などの条件を満たせば、容積率に含まれないので、より広い建物が建てられます。天井高は低くなりますが、収納庫や書斎などに十分利用できます。

2.プライバシーを確保しにくい

前述のように狭小住宅は、前面道路や周辺建物からの距離が近いため、プライバシーが確保しにくいという特徴があります。これに対しては、設計担当者とよく話し合って間取りや窓の位置の工夫が必要でしょう。

3.排気に注意が必要

窓を開けたときに、お隣のキッチンやトイレの換気扇があるのは嫌なものです。また、ガス給湯器からの排気は、かなり高温になります。このような排気に関しては、隣家の迷惑にならないように設計段階から注意が必要です。

4.高さ制限

住宅を建てる際には、高さに対するさまざまな制限があります。たとえば、第1・2種低層住居専用地域の場合、建物の高さは10mまたは12m以下にしなければなりません(絶対高さの制限)。また、隣家の南側の日当たりを確保するため、建物の北側の高さは一定の制限(北側斜線制限)があります。狭小住宅は、敷地面積が狭い分だけ高くしたいものです。そのため、このような制限を十分考慮した設計が必須となります。

デメリットをメリットに変換して最高の住まいを

このようにたとえ狭小地であっても、非常にコストパフォーマンスが高く、住みやすい家を建てることは可能です。しかし、それには狭小住宅に関する豊富な知識が必要でしょう。

そこで頼りになるのがハウスメーカーです。経験豊富なハウスメーカーなら狭小住宅に関しても熟知しています。また、地価の高い土地に建てるケースが多い狭小住宅は、少しでも土地代と建築費のバランスが崩れると予算をオーバーしてしまいます。そうならないためにも、土地探しの段階から資金計画の得意なハウスメーカーをパートナーにすることをおすすめします。

狭小地で暮らしやすい家を建てるには、豊富な知識がカギ。狭小住宅が得意なハウスメーカーと、土地探しの段階から二人三脚で計画を進めましょう。